設計のすすめ方
設計のすすめかたは、設計者によって異なりますので、ここではnestの場合についてお話したいと思います。
まず、敷地について、予算、家族構成、年齢、職業など基本的な情報をお聞きします。
その上でこう訊ねるとします。
「どんな家にしましょうか?」
そうすると、例えばこんなふうな答えが返ってくるかもしれません。
「リビングダイニングは20畳ぐらい、対面キッチン、寝室が一つ、子供部屋が2つ、客間が一つ、ウォークインクローゼット、納戸、収納がたくさん欲しいです。」
なるほどなるほど。でもこれをただ並べただけでは設計とはいえません。
それから、お茶を飲みながらいろいろな話をします。
「けっこう日焼けされてますね。」
「昔から釣りが好きで、仕事の合間にやってまして。釣りの道具が多くて困ってます。」
「なるほど、それで収納がたくさんほしいんですね。ところでそのお子さんのバックかわいいですね」
「家内が作ったんです。裁縫が好きで。それで、納戸の隅にミシンを置こうと思ってるんです。」
「奥さんはいつも裁縫をされてるんですか。」
「だいたい子供が寝てから余裕のある時ですね。主人は横でテレビを見たり、持ち帰った仕事を片づけたりしてます。つい台所の片づけもほっといて裁縫をしてしまって、朝になって後悔したりするんですよ。」
「お二人とも、趣味があって楽しそうですね。」
「凝り性なんですよね。上の子も私たちに似て凝り性で、今はゲームのプログラミングにはまってるんです。将来引きこもりにならないか心配で。」
「下のお子さんはなにがお好きなんですか?」
「この子は、動物が好きで犬を飼いたいと言ってます。」
「僕が飼いたいのは犬じゃなくて、猫だよ。」
こうしたなにげない会話の中には生きた情報が含まれています。
リビングをただ広くとるよりも、各人の趣味のコーナーをあちこちに設けた複合的な部屋にしたらどうかとか、台所は散らかっていても見えないようにしたほうが良いかもしれないとか、猫のためのスペースをどう考えれば楽しいかなとか、そういう細かい情報と、住み手の顔や関係が見えることで、設計の要点がわかってきます。
そして、敷地と住み手にぴったりくる家はどんな形か考えます。
もこもこもこと家の形ができてきます。
「どんな家にしましょうか?」の答えは、最初はよくわからないというのが正直なところだと思うのです。
あなたはどんな人ですかとか、どんな家族ですか、と訊ねられてもうまく答えられないのと似ています。
それでも最後には、「考えてもなかったけど、こんな家が欲しかったんだ」と思ってもらえるような、そういう設計をnestは目指しています。